今更聞けない、言えないバッテリーの基礎知識

80D26Rの容量を80Ahと思っている人とか、L.Rは左(Left)右(Right)と思っている人等

右、左Right, Leftの呼び方はすごい昔に根源があるのかもしれませんが少なくとも1999年以降の日本工業規格(現日本産業規格)が定めたJIS D5301にはRight,Leftの呼び方の記載はありません。ただ下記のような記載があるのみです。

資料1

JIS D 5301:2019より抜粋

この様な間違いは俗称として広く使われているので、聞く側があわせれば問題ないので真偽についてはスルーする場合が多いと思います。今回はこの様な今更聞けない、言えないバッテリーの基礎的なお話を致します。

バッテリーの性能・品質は何を見れば分かるの?

自動車用のバッテリーの性能・品質を見極める要素は大まかなところで….

1.始動力(CCA)

2.蓄電容量(Ah,RC)

3.自己放電特性

4.耐振動性能

5.充電受入特性

6.寿命性能

7.電解液保持特性

8.その他

バッテリーの規格・形式は車両への適合に最も重要な要素です。

JIS規格(日本、80D26R等)BCI規格(米国、Gp26等)EN規格(欧州、LN4等)etc…..

いずれ消滅するバッテリーのJIS規格品番

最近は日本車にもEN規格のバッテリーが搭載されたり、アイドリングストップ用(IS)だったりしてお客様から「よう分からん!」とお叱りを受ける時もあります。(笑)ゆくゆくはEN規格に統一される流れにあるのですが、今回は今のところ一番身近なJIS規格の品番について少しだけ詳しくお話致します。

80D26Rの80は容量ではなくJISの性能ランクです。 RC×CCA√/2.8

JIS規格品番の左端の頭の数字は日本産業規格が定める性能ランクです。冒頭で述べた様にバッテリーの性能・品質を計る要素には幾つかありますが、この性能ランクはその中の始動力(CCA)と蓄電容量(RC)を数式にあてはめ算出された数値になります。算出式はRC×CCA√÷2.8=JIS性能ランクとなります。

RCはリザーブキャパシティー、CCAはコールドクランキングアンペアーと呼びます。算出方法は

RC:満充電した蓄電池が25±2℃のとき、25Aの電流で10.5V±0.05Vまで連続放電可能な持続時間(分)で表します。

CCA:蓄電池のエンジン始動性能を表す尺度で-18℃±1℃の温度で放電し、30秒目電圧が7.2V以上となるように定められた放電電流。と、なります。

例えば、80D26Rの場合リザーブキャパシティーRCが100分コールドクランキングアンペアーCCAが490Aの場合

100×490√÷2.8=79.1となり,表記は80となります。

”取決めとして、形式に使用する数値は50未満は2刻み、50以上は5刻みの整数で表示する。求めた数値が50未満の場合は最大1.0を50以上の場合は最大2.5を加えて性能ランクを表示することができると、定められています。(JIS D5301:2019引用)”

仮に算出された数値が82.5であれば82.5+2.5=85になり性能ランクは85と記載されます。

バッテリーの横面の面積を表すA,B,D,E,F,G,Hと長さを表す2桁の数字。

バッテリーの幅と長さを表す性能ランク右横のアルファベットは小さい順にA,B,D,E,F,G,Hの7種類です。その右隣の数字はバッテリーの長さを表します。17,19,20,23,24,26,31,41,51,52cmの10種類からなります。長さ、幅の定義もありますので冒頭の資料1と資料3を参考にして下さい。

テーパー端子の種類は細端子と太端子の2種類だけ。欧米規格に細端子はありません。

JIS D5301に定められている端子はT1細端子T2太端子の2種類だけです。詳細は資料2をご参照下さい。

因みに欧米規格のバッテリーの端子T2端子のみです。※Aサイズのボルト式は例外と致します。

資料2

端子の使用区分としましてDサイズ以上のバッテリーにはT2端子を使用し、BサイズのバッテリーにはT1又はT2を使用するとなっています。BサイズのバッテリーにT2(太端子)を使用する場合は形式の末尾にSを表示して区分するとなっています。

(JIS D5301:2019より)

例えば55B24RSであれば55B24RのT2(太端子)の事とJIS規格で定められています。その他、寸法、液口栓(液栓キャップ)についても記述がありますので参考までに添付いたします。

資料3

JIS D5301:2019より抜粋

JIS規格品番のバッテリーには他にもアイドリングストップISの品番がありますがこちらはまたの機会にさせて頂きます。

私達の身近にあり100年以上基本設計に大きな変化の無い鉛蓄電池ですが、私達の勝手な思い込みや誤解のまま使用したり、人に伝えたりと正確な認識がないまま製品を購入したり、販売したりして本来の能力が発揮できないでいるバッテリーさん達が多く存在すると思います。それは人と製品双方にとって良い事だとは思いません。私は少しでもそんな誤解や思い込み(偏見)がバッテリー業界から無くなれば良いなと思っています。この次はバッテリーは冬に傷むとかシールドバッテリーは充電出来ないとかを本気で思っている人達の誤解と偏見(思い込み)を解くお話をしたいと思います。いつになるかは、分かりませんが…..

全ての製品を正しく理解して正しく使用する事で人々の生活はよりゆたかで安心、安全になります。限られた資源を有効に活用することは売る側、買う側双方にとって重要なことです。その一助になれば幸いです。本日はありがとうございました。